会員の声

通信教育学 ― 私の研究関心 ―

2014年10月9日 00時00分
会員の声

 通信教育の本質が通信手段によって教育をおこなう「遠隔教育」であることにあるなら、高校の通信教育が目指すべきその完成形は、通学手段によることなく通信手段によって高校教育の目的を実現することでしょう。

 現行法規は、対面方式での面接指導を実施することを義務づけているため、通信制の教育の一部は通信手段でなく通学手段によることになります。それは、通信手段による教育(通信教育)を強化する方向の「規制」とは逆行するので「規制緩和」とも言えますが、通信制の教育の一部を通学手段によらなければならないと定めているのですから、通信制の教育のなかに通信手段によることのできない範囲を規定しているという意味では、通信手段による教育(通信教育)の発達を妨げる「負(マイナス)の規制」をおこなっているとも言えます。

 昭和30年の文部次官通達で面接指導を義務づけたのは、利用できる通信メディアが郵便しかなかった当時としては、やむを得ないことでした。しかし現在では、録音録画も容易な電子メディアやインターネットなど双方向の情報メディアが普及しています。通信教育(通信手段による教育)では高校教育の目的を実現することができないという考え方じたいを改めるべきでしょう。

 通信教育学への私の研究関心は、現行法規で通信手段によることができる範囲の限界(上限)を明確にして、その範囲を拡大する法規改正を提言すること、そのために、通信教育の本質を解明してそれを高校教育の目的に位置づけ、通信教育を高校教育の一つの独立した形として根拠づけることです。面接指導の義務づけを縮小して通信教育に対する「負の規制」を緩和すれば、通信教育にとっての「正の規制」を強化することにつながり、高校の通信教育がその完成形に近づくことになります。

(愛知県立旭陵高等学校:石川 伸明)

「日本通信教育学会報」(通巻42号)より