会員の声

出藍の誉

2023年7月5日 20時06分
会員の声

 この度、本学会の会員様とご縁があって入会いたしました大学院生の中玲蘭と申します。通信教育に関する最新の実践・研究の動向を把握したく入会させていただきました。また、通信制高校にご勤務されている先生方とも交流を深めたく思います。

 私の専攻は芸術科教育ですが、私自身が公立の通信制高校で学んでいた経験から、通信制高校における教科教育としての美術教育を研究しております。管見の限りではありますが、通信制高校における学術的な研究は、在籍する生徒の特徴から教育心理学や教育社会学の分野で隆興しています。その一方で、学校教育の大部分を占める教科教育の方法論や内容分析は未着手な部分が多く、知の蓄積が充分になされていないのではないかと感じております。美術教育は実技を扱うため、教師にとっても生徒にとっても多くの困難を抱えやすい教科です。その一方で、アートセラピーや対話型鑑賞のように、生徒が自身と向き合い、他者とのつながりを感じる機会を生み出せる教科でもあります。N高等学校などの影響により、通信制高校がメインストリームへと移行する過渡期にある今、改めて通信制高校の教科教育の在り方を検討する必要があるのではないでしょうか。主観ではありますが、アートは通信制高校に通う生徒にポジティブな影響をもたらすと確信しております。

 これからは、学術的な側面から、あるいは芸術科教育という分野から、通信制高校のよりよい発展に貢献できればと考えております。そう思えたのも、通信制高校に在籍していたときに支えてくださった先生方の存在があってのことです。私の母校である栃木県立学悠館高等学校の校訓は「出藍」です。青は藍より出でて藍より青し。いつかこの言葉を体現し、恩師の方々が私を指導したことを誇れるように、これからも研鑽を積んでいく所存です。    

(筑波大学大学院 教育学学位プログラム芸術科教育分野 博士前期課程 中 玲蘭)

(「日本通信教育学会報」通巻60号より)