会員の声

ご挨拶 〜私が通信制高校の研究をする理由〜

2024年9月27日 15時50分
会員の声

 先日の第71 回研究協議会にて、初めて対面で参加させていただきました。示唆に富む研究発表に多くの学びをいただき、なにより情報交換会において、様々なつながりや貴重なお話をいただきました。このような一期一会のあたたかさこそ、対面学会の魅力であると再認識しております。

 さて、私は現在、広島大学大学院の博士課程後期(D3)、教育行財政学研究室に所属しております。伝統的にアメリカの教育行政・制度研究を中心とする研究室において、日本の高校教育のいち課程である通信制高校の研究をしております。

 なぜ、私が通信制高校にこそ注目したのか。それは通信制高校の制度および展開状況への注目が、これからの日本の高校教育の在り方を考究するうえで不可欠であると考えるからです。通信制高校の制度的特質は、制度発足当初から学校の「非通学性」と就学・修学範囲の「無限定性」を有していることにあります。ここから、これまでの日本の公教育制度が前提としていた「特定の「空間」、「時間」による教育機会保障」を相対化しうる示唆的対象として、通信制高校に注目する学術的意義を見出しています。

 全国の至るところで人口減少やそれに伴う学校再編(=統廃合)の議論が避けられません。またテクノロジーの発達により学習形態が多様化(学習者の選択肢・ニーズが拡大)しています。このような状況において「教育機会を保障する」とは何を意味するのか。とりわけ高校教育機会保障において教育行政はどのような役割と責任を有し、担い得るのか。以上の問題意識にもとづき、研究に取り組んでいます。

 本学会の皆さまのご著書や過去の研究論集からは、理論的にも実践的にも多くの知見と学術的刺激をいただいております。皆さまに直接ご指導・ご鞭撻をいただけるよう、そして本学会に少しでも貢献できるよう、想いを持って真摯に教育・研究活動に精進してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

(広島大学大学院・院生 川本 吉太郎)

(「日本通信教育学会報」通巻61号より)